Corporate Income Tax: 法人所得税

 

 

 

法人所得税の概要

 

 

1.  法人所得税の申告スケジュール

 

1) 見積課税所得の申告と納税

 シンガポール法人は、会計期間の末日から3ヶ月以内に、IRASに対して見積課税所得 (Estimated Chargeable Income: ECI)を申告し、その後送付されてくる課税通知書に基づいて見積納税額を納付します。納付期限は課税通知書の通知日から1ヶ月以内です

 

改正ポイント(From YA2013) 

 原則としてすべての法人はECIを申告する必要がありましたが、2012年10月1日以後に終了する会計年度については、以下の条件を満たすことを条件にECIの申告が免除されます。

  • 年間の売上高がS$1million以下、かつ
  • ECIがゼロ(NIL)

 

 

2) 課税所得の申告と納付 

 毎年3月頃、IRASより法人所得税申告書 (Form C) が送付されてきます。Form Cに必要事項を記入して、11月30日までに申告します。但し、電子申告手続きであるe-Fileシステムを利用して申告書を提出する場合には、申告期限が12月15日までに延長されるため、現在は多くの納税者がe-Fileシステムでの申告を選択しています。  

 その後、IRASより賦課決定通知書(Notice of Assessment)が送付され、この通知書に記載された納付額と見積納付時に納付した額との差額を精算することになります。納付不足額が計算される場合には、通知書の発行日後1ヶ月以内に不足分の納税が必要となります。

 

 

3) 申告書類

 申告の内容により、上記Form Cとともに提出が必要となりうる書類があります。申告書類には以下のようなものがあります。

 

  • Form C: 法人所得税申告書
  • Appendices to Form C: 所得と控除に関する追加的な情報の付録(税金計算書、財務諸表など)
  • Group relief Form for Transferor (GR-A) or Claimant Company (GR-B): グループ法人税制を採用する場合、損失移転元法人と損失受入先法人に関する情報
  • Audited/Unaudited accounts: 監査済財務諸表(監査が免除される場合あり)。ACRAへXBRL形式で財務諸表一式を提出している場合には、損益計算書のみの提出も認められます。

 

4) Form C-Sの導入

   IRASは、小規模企業者の税務コンプライアンス手続きに関する事務負担の軽減を目的として、新しい税務申告様式となるForm C-Sの導入を発表しました。このForm C-SはYA2012から適用され、適用を選択する以下の「適用要件」をクリアした小規模事業者は、財務諸表や税金計算書などの提出が免除されるというメリットを受けることができます(財務諸表、税金計算書の作成・保存の義務自体は免除されません)。

 

 適用要件

  • シンガポール法人であること
  • 年間売上高がS$1M以下であること
  • 17%の標準税率の適用を受ける所得のみを有すること

 

 但し、このForm C-Sを利用して申告する場合には、キャピタルアローワンスの繰戻し、グループ法人税制、R&Dアローワンス、外国税額控除を適用することができない点に留意が必要です。

 

 

5) 法人所得税額の確定

 IRASの担当者が提出された申告書類をレビューし、必要に応じてタックス・エージェントに対する質疑応答を行い、問題がないと判断された後に最終的な賦課決定通知書が送付されます。この最終の通知書をもって、納税額が確定したものとみなされます。                                        

 

 

 

 

2. 賦課課税制度と賦課年度(Year of Assessment: YA) 

 上記のように、シンガポールの税務申告は課税当局により納税額が確定される賦課課税制度が採用されており、日本の申告納税制度とは異なっています。ただし、事務負担量の面では大きな差異はありません。 

 また、シンガポールの法人所得税上の賦課年度(Year of Assessment:YA)とは、暦年上の前年中に終了する会計年度を指します。例えば、賦課年度2012(”YA2012”)というと、前年である2011年中に年次決算期末が到来する会計期間を意味することになります。

 

 

 

 

 

3. 課税所得の計算と税務調整(Adjustments

 日本と同様、シンガポールにおける課税所得計算は、会計上の利益に税務調整と呼ばれるAdjustmentsをプラス・マイナスすることによって算定されます。Adjustmentsは、減額が認められない経費項目は会計上の利益に加算し、逆に利益計上が必要とされない収入は減算されることになります。

 

以下に税務調整が必要となるAjustment項目のうち、代表的なものを列挙します。

  • 益金不算入収益(Deduct Non-Taxable Income)                      会計上の収益でも課税所得の計算上は所得から除かれるものとして、キャピタルゲインや固定資産の売却益、輸出業者の輸出による利益、外貨換算益、国内からの配当金、一定の国外からの配当金、国外支店からのサービスフィーや事業所得のうち一定のもの、その他シンガポールの所得税法(法人所得税と個人所得税両方を規定しています)上税金が免除されるものがあります。

 

  • 投資所得に対する調整 (Adjustmemnts Net Investment Income)              投資所得には利子所得や配当所得、不動産賃貸所得等があり、課税所得の計算上はそれぞれの投資所得が事業所得とは区分して計算されます。つまり、日本の”所得税”(個人に対する所得課税)を計算する場合と同じように、シンガポールでは法人所得税においても分離課税制度の考え方が採用されていることを意味します。計算方法として、法人の総所得から各投資所得を構成する収入を抽出して、その収入に対応する費用の内一定のものを控除して算定します。

 

  • 損金不算入費用 (Non-deductible Expenses)                         資本取引とみなされる資産の取得にかかる減価償却や貸倒引当金の計上、CPF(年金)の掛け金、入会金、外貨換算差損、事業上の経費に該当しない支出等は、税務上の費用と認められません。                                   

 

 

 

Last updated on Oct 9th 2012